子どもの毎日の生活にとって最も大切な人格の要素は、情緒の安定です。それは、お母さん、お父さんの暖かい心に触れることですが、それを具体的にいえば、スキンシップや遊びです。お母さんやお父さんのそばにいって「甘える」ことができると、子どもの情緒は安定するのです。

ところが、お母さんのそばにいくと、しょっちゅう文句をいわれて、落ちつかなくなっている子どもが、近ごろ、非常に多くなっています。 このようなお母さんのそばにいくと、子どもの心は落ちつかなくなりますし、ついには心が母親から離れていってしまうでしょう。そうなれば、思春期以後になると、家庭を離れて非行集団の仲間に入ってしまうかも知れません。非行に走った子どもの中には幼いころに、お母さんの温かさを味わうことができなかった子どもが多くいるのです。お母さんの温かさは、子どもの年齢が低ければ低いほど、肌で感じ取ります。

ところが、最近、赤ちゃんをねかせっ放しにして、抱っこをしたりあやしたりしないお母さんがふえています。その結果、子どもがおとなしくねていたり、ひとり遊びをしています。お母さんにとっては世話の焼けないよい子のように見えますが、母子関係を通じて発達する情緒は、未成熟のままです。表情も、いわゆるポーカーフェイス、つまり、表情に喜怒哀楽が現れないのです。「おとなしい」子どもの中に、このような子どもがいます。早く対処しないと、友だちとの関係もできず、思春期以後になって突然、世間を騒がすような出来事を起こす子どもになることさえもあります。

母子関係が最も緊密になるのは、1才半から2才半の問、とくに2才前後です。お母さんの後追いがさかんになります。夜中に添い寝を求めて、お母さんの布団の中に入り込んでもくるでしょう。このような姿が現れてこそ、子どもの情緒の発達が順調に行われていることを意味します。

もし、このころに、お母さんを慕わないという子どもがいれば、心配です。独立心のある子どものように見えますが、にせの独立心であり、情緒は抑圧されているのです。独立しているように見える子どもは、お母さんにとっては世話の焼けない手なので、「よい子」のように見えますが、実は「危険な子」です。

 そのような事がはっきりしたならば、年齢を問わず肌の触れ合いを多く取ることです。添い寝も、その大切な方法です。

そのようにすれば、甘えん坊になってしまはないかと心配が生ずるかもしれません。それを防ぐには、次の自発性の発達を促すことが大切です。