子どもの遊びと大人の関わり

 小学生になるまでの子どもの遊びはすべて学習の基礎となるものであり、遊び方の発達度によってその子の精神年齢や知能の高さが変わってくるほど大切なことです。今回は、特に3才ぐらいまでの子どもの遊びについて考えてみましょう。

一生において最も大切な時期だとされている3才まで、また「三つ子の魂百まで」と言われるぐらいこの時期に身に付いたことは一生の宝ともなり、逆に害にもなる時期です。まず1、2歳児の遊びというと、お母さんのまねっこ遊びから始まります。

例えばお洗濯のまね、お食事を作るまね、お掃除のまねなどお母さんがしていることに対して興味を持ち、自分もしてみたい気持ちが遊びにつながります。そういった生活に根付いた模倣だけでなく、お母さんが見せる楽しそうな遊びにも興味を示します。

歌が好きでよく唄うお母さんの子は、歌をよく唄いますし、曲に合わせてリズムを一緒にとっているお母さんの子は、リズム遊びが大好きです。絵本に関しても子どもの興味を引き出すような読みかけをするお母さんの子は絵本が大好きになります。

もう1つこの時期言語面においても周りの大人のまねをすることで、たくさんの語彙を吸収し表現力を身につけます。親の方からすると、早くしゃべってほしいということで、せっせと話しかけ、言葉を引き出す努力を惜しみませんので、そのやりとりが楽しくて、人のお話を聞きそれに対して返していく楽しみを知ります。

 比較的しっかりした言葉が出始める2才前後から、お気に入りの遊びができてきます。言語面の成長もあり、空想の世界を持つようにもなります。特にじっくりと打ち込んで遊ぶ遊び方には、必ずといっていいほど空想の世界があり、空想の世界の中で、動き、会話をし、その世界を広げていきます。

それが1人遊びの始まりです。1人遊びには、積み木やブロックを使っていることもあるし、人形を使っていることもあるし、絵本を使っていることもあります。それは、それまでのお母さんの関わりによって楽しかった遊びが反映されているのです。

ただし、これらの遊び道具を考えてみると、あくまでも既製のできあがった玩具ではなくて、どのようにでも空想の世界を広げていける可能性のある玩具であることがわかります。もう少し月齢が上がると製作(お絵描き、お粘土、折り紙、廃材品製作など)は恰好の1人遊び道具になります。

 しかし、その頃になっても、またそれ以後も「ママと一緒に!」と言ってなかなか1人遊びが始まらない子がいます。それは、自分のお気に入りの遊びがまだ見つかっていないので、「ママと一緒に探している」状態か、もしくは、お母さんは関わっているつもりでも一緒にいる子どもがその遊び方が楽しくない状態が続いているということが考えられます。

その原因はこどもが考えなくても勝手にお母さんが遊び方を押しつけて遊んでいる場合やせっかくの遊びなのにお母さんからの指示が多いなどです。

 遊び方の具体例として「積み木遊び」をあげてみましょう。物が掴めるようになり、その後1歳過ぎに何でも口に入れて確認する時期がきます。確認作業がおおかた終了し始める頃、大人が示す玩具に遊び道具として興味を示すようになってきます。

その時期をつけなければならないことは、大人が積み木に対して持つ既成概念が「積み木は積んで形を作る物である」ということです。 その頃の子どもが積み木を積んで楽しいということはまず無いでしょう。

なぜなら、まだ形の認識がついていないので色々な形の積み木をうまく積み上げていくことは難しいし、積み上げていけるほど手や腕の巧緻性がまだ十分ではないからです。その頃の子どもは積み木を投げること、大人が積んだ積み木を倒すことを好みます。その遊びを楽しむからこそ、次に自分で積んでみようと思えるし、物に対する理解と言語の成長により、横に並べて道にしたり、囲うように置いてお家にしたり、できるだけ自分で積み上げて倒れるスリルを味わうといった遊びに広がっていくのです。

 既成概念から抜け出せないお母さんは、「積み木を積んでも倒すばかりで・・・」とか、「投げて壁や家具に傷が付くので・・・」と言って積み木を子どもの手から遠ざけてしまいます。

子どもの気持ちを理解しようとするお母さんは、何度でも積み木を積み、こどもと一緒に怪獣になって身振り手振りをつけながら積み木を倒して歩くでしょう。それが子どもの目線にたった遊び方です。
そんな風にお母さんが一緒に遊んでくれたなら、子どもはそれは楽しいに違いありません。 そして、積み木が大好きになり、始終積み木遊びを経験することになるので遊び方がどんどん広がっていきます。

充分積めるようになり、トンネル作り(空間を意識する)などもできるようになると、次の段階として積み木を何かに見立て、そこに別の道具(車や電車や人形や空き箱)を持ってきて遊びを広げていきます。

ただの木である積み木に命が吹き込まれ、その遊びにスト−リ−がついてきます。そのスト−リ−は自分が経験したこともあるし、大好きな絵本のスト−リ−であることもあるし、好きなキャラクタ−のお話しであることもあります。

そのスト−リ−の中で、子どもの目線にたった会話のやりとりをお母さんがしてくれることで、また、その遊びが大好きになり、そのうちお母さんが加わらなくとも、一人で、そのスト−リ−を展開していけるようになります。

 1人遊びが始まったから「もう大丈夫」というわけではありません。なぜなら、しばらくの期間その遊びを見ていくと、いつまでたっても同じ遊び方をしていることがあるからです。

同じ遊びは長続きはしませんし、おおかたその遊び方に満足すると、必ず遊びを発展させようとします。しかし、遊びを発展させる方法を思いつかなければ、お母さんが気がつかない間に積み木遊びが中断してしまっているかもしれません。

そうなれば、またお母さんが新鮮な遊びの風を吹かせてあげて、もっと深く積み木遊びができるように関わっていく事も必要でしょうし、ある程度積み木遊びに満足しているようなら、もっと複雑な素材の遊びも取り入れていけばいいのです。

そういった意味で、積み木やブロックよりもお絵描きやお粘土や切り張りといった遊びは、限りなく続けていけるので、お母さんの努力で是非好きな遊びの1つにしていただきたいものです。

 いずれにせよ大好きなお母様がじっくりと遊びに付き合ってくれ、楽しい会話を交わしてくれるなら、子どもは満足感や達成感を沢山味わって、「もっともっと遊びたい!」と間違いなく思います。

そして、好奇心や探求心が広がり、「他の人はどうやって遊んでいるんだろう?」「何を話しかけているのかしら?」と興味を持つことで、社会性の芽が育ちます。

また、遊びにはお母様の好き嫌いも反映されます。外遊び、家遊びの比重が変わってきます。外遊びの方が好きなお母様の子は、当然外遊びの方が好きになる可能性が高くなります。

今外遊びで、戦いごっこやおいかけっこをしている子は、少し家の中での遊びにも目が向くように関わってあげることも必要でしょう。特にお絵描きや製作、絵本の読み聞かせは、学習の基礎として大切な遊びです。

2001/8/15 ぴーすらんどたいむず掲載