マナーのいい子は親次第

先日ス−パ−に行き、お遣いものにするためにカウンタ−でお菓子を包装してもらっていた時のこ とです。 小学校高学年の女の子が 5千円札を片手にピラピラさせながら、いきなり「両替!千円!」と店員さんに向かって言いました。

あまりのぶっきらぼうさに驚いたのですが、話しとしては、それで通じたのでしょう。店員さんは、何事も無いかのように千円札5枚を女の子に手渡しました。

またある日、休日に電車に乗っていた時のことです。ベビ−カ−に乗った幼児と低学年ぐらいの女の子、そのご両親とおばあちゃまの一家族が乗り込んできました。一番に乗ってきたのは、女の子とおばあちゃまです。それほど混んではいない電車でしたが、後から乗ってくるパパとママのために席取りをしました。

女の子が座席の上で寝ころび、おばあちゃまは持っていたバッグを横に置きパパとママが座れるスペ−スを確保しました。その後乗ってこられたパパとママは、さっさと座り、その横にはベビカ−に乗せたままの弟がいました。

「確か電車の中ではベビ−カ−はたたまなければいけないはず・・・? 次の駅で降りるのかしら?」と思いながら見ていると、その後パパは携帯電話をかけ始め、それから数駅してその家族は降りました。

幼児を持つお母様方は、よく「しつけ」について悩まれます。机に登って困る、食事の時お茶で遊ぶ、所構わず物を引っ張り出す等々。また、同年代の子どもに噛みついたり、叩いたりする等々。 前者はいわゆる探索行動における「いたずら」であり、後者は、まだまだ言葉で伝えることができない幼い子が友だちと交わる手段の1つです。

ですので、これらは叱る事でもなく、子どもの気持ちを察しながら少しずつしていいことと悪いことを知らせていけばいいのです。時には逆にお友達に叩かれて、痛い思いをすることもあるでしょうが、人の痛みを知ってこその教育であると思いますし、先々に止めてしまうことで、色々な事を経験せずに成長していきます。

その後成長するにしたがい親が見本となって知らせていかなければならない社会のル−ル・マナ−や人と交わる時にいかに気持ちよく事を運ぶかといった社交術(ある種常識的なことだと思うのですが)があります。

ス−パ−で会った女の子は言葉足らずでした。人に話しかけるとき、相手の人がどういう状態なのか、また、どのように話しかければ失礼でないのか、といった事を考え、突然話しかける大人は少ないと思いますが、おそらくこの子はそのような事を教えられたこともなく、意識せずに育ってきたのでしょう。

このまま「子どもだからしかたがない」と言って済ましてしまうと、きっと大人になっても相手の状況も考えずに話しかけることでしょう。「すみませんが・・・」「〜してください」 という一言があるかないかでこれほど言葉を受け取る側の気持ちが違うのだということをこのとき実感しました。

よくご挨拶ができなくて悩まれるお母様がいらっしゃいますが、幼児期には、情緒が安定していないと、他者と交わる時に不安で、「わかっていてもできない」ということがあります。「わかっている」のは、お母様に口やかましく「ごあいさつは?」と言われているからではなく、普段気持ちよくご近所の方にご挨拶されているお母様を見たり、他の大人の様子を見て「わかっている」のです。

少しずつ子どもの周りの社会が広がり、気持ちも安定してくると、自然に自分からご挨拶できるようになっていきます。しかし、周りの大人がいい加減にしていると、子どもは「そんなものだ」と思いますので、社交術としてのご挨拶の必要性を感じません。また、命令するかのように単語だけを並べて伝える言い方にもとても不快感を覚えましたが、おそらく普段の会話が単語だけで通じているのだろうということは想像がつきます。

電車に乗ってきた親子3代の行動は、言うまでもなく「???」です。これほど見事にマナ−を守
られていないと、「これは、ぴ−すらんどたいむずの題材になる!」と思ってしまったほどです。 女の子はパパやママに座ってほしくて好意からしたことなのかもしれないのですが、それを注意するでもなく、同じように場所取りをしたおばあちゃま。ベビ−カ−をたたまずに乗ってきた両親と堂々と携帯電話で話すパパ。

優先座席に気にせずに座っている学生や電車の中で平気でお化粧をしている 女の子を見かけますが、寝ころんで場所取りをしたこの女の子は、きっと「お年寄りに席を譲る」という ことを知らないまま大きくなることでしょう。
  
TPOという言葉があります。時と場所と状況をわきまえて行動することだと思いますが、こどもたちは、 親の姿を見て自然に学びます。その行動のしかたが1人1人違うとしたら、それは家庭の教育観や価値観 の違いです。

「両替!」という前に「あ、この店員さんは今接客中だから少し待とう」ということを自然 に考えられるようになるには、普段同じような経験をお母様と一緒にしていて、お母様が「今店員さんは忙しそうだから少し待ちましょうね。」と子どもに語り掛けたり、態度で表していたりすることを子どもが見て知っているからです。

また、「両替をお願いします」と言えるようになるには、大人が使い、言い 方を聞かせ、知らせていかなければなりません。人に何かを頼むときは、「お願いします」「〜してくだ さい。」と言い、してもらったら「ありがとう」とお礼の言葉を添える事も親の姿を見て確認していきます。

赤ちゃんが使っているオモチャをお母様が「チョ−ダイ」と手を出し、渡してくれたら「アリガトウ」 と頭を下げることを繰り返すと、その内赤ちゃんは「アリガトウ」を言う言葉と同時にピョコンと頭を下げることを覚えます。

それと、同じように1つ1つ気持ちの良いマナ−を親が知らせて、態度で示していくと、子どもは自然に知っていきますが、悪い見本を大人が見せると、悪いマナ−を知っていきます。自分の子どもに対してだけでなく、こどもたちの良きお手本となるマナ−を大人が見せていきたいものです。

   h15/4/16ぴーすらんどたいむず掲載